大判例

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大阪地方裁判所 昭和36年(ワ)669号・昭36年(ワ)2749号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕そこで右の火災が被告織田の重大なる過失にもとづくものか否かについて判断する。<証拠>を綜合すると、被告織田は昭和二八年頃から二種三級の電弧熔接士の資格を有し、昭和三四年三月から被告増田方に熔接工として勤めていたものであるが昭和三五年六月九日頃から被告さくらや方土蔵屋上に設置する冷却塔の土台となる鋼板を支えの鉄骨柱と接合し鋼板と鋼板とを電気熔接する作業を始め、火災前日である同月一二日にも午後八時すぎ頃まで鋼板裏側の熔接作業を行つていたこと、そして右熔接工事の際に生ずる火の粉や熔鉄片が原告方倉庫東南側の空地や原告方居宅のひさしの方に盛んに飛んでくるので原告は同日午後三時頃被告織田及び助手として共に作業している矢野貫爾に火災の危険があることを注意し、同日夕刻にも同様の注意を与えたこと、原告方南隣りの渡辺富子も同日夜窓が真赤になる位火花が出ているのを見て、居宅二階東側の窓から作業員に対して危険ではないかどうかを尋ねたこと、被告織田は右の注意を聞き同日鋼板の熔接により鋼板の南側にあつた物干台の板に多数の焼焦げあとができていたことをも知つており又右作業現場の周囲には人家が密集しているうえに西隣の板塀の内側には古すだれが立てかけてあつて、熔接の火の粉や熔鉄片が右板塀の中にも飛び散つていたことを十分知り火災の危険があることを予見していながら、同月一三日作業にとりかかる前に何ら危険防止の措置を講ずることなく熔接工事を続行していたものであること、大阪市内では昭和三六年中の火災二、八一九件のうち二四件が電気熔接による火の粉又は熔鉄片による出火と断定又は推定されており、又昭和三七年から過去五年間に八七件の熔鉄片による出火事例があること、従つて電気熔接のように火花を発する作業をする者には火花が可燃物に到達しない距離をとつて作業をするか又は不燃物で火花を遮断する措置をとつて行なう義務があり、現に大阪市内では作業場の周囲に危険防止のため幕を張つたり見張りをおいたりして作業を行なうのが通常であるにもかかわらず被告織田は何らそのような危険防止の措置をとらなかつたため、火災を発生せしめるに至つたものであることが認められる。<証拠判断略>

以上の事実を合わせ考えると、被告織田が熔接の火の粉又は熔鉄片によつて火災を生ぜしめた行為は被告織田が遵守すべき注意義務を著るしく怠つたためであつて、同被告の重大なる過失によるものというべきである。(山本矩夫)

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